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大阪高等裁判所 昭和60年(ラ)175号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一件記録によると、抗告人は、昭和四八年夏ころ奈良県生駒郡斑鳩町に中華料理店を開業し、同五一年ころ事業を拡大して大和郡山市筒井町にも中華料理店を開業し、盛時には、両店で従業員二〇名余、月間売上高合計九〇〇万円に達していたが、前示二店舗開設資金計五一〇〇万円位を金融機関等から借入れていたため、その元利金の返済等に追われて次第に経営が悪化し、同五四年春ごろ手形不渡りを出すに至つたが、さらに経営を立て直し営業を続けていたものの、その後も買掛金、知人や町の金融業者からの借入金が増大し、同五五年四月二五日ころに前示筒井町の店舗、同年五月二三日ころに前示斑鳩町の店舗の各営業をいずれも停止し、同年七月八日奈良地方裁判所に自己破産の申立をしたこと、同庁は同年一一月四日午後一時、抗告人の破産を宣告し、同時に破産管財人を選任し、以後破産管財人による債権調査が行われ、同五六年三月一〇日の債権調査期日に債権調査が終了し、破産法二四〇条一項による確定債権は合計六一〇三万九三六二円、同破産債権者数二〇名であり、右のうち一名(債権額一〇〇万円、倒産直前の同年四月二六日借入)のみが、抗告人が破産宣告前裁判所に申述していた町の金融業者であり、その余の債権者は、食品材料等の仕入先、知人、金融機関であること、破産管財人は、右債権調査終了後二年余を経た同五八年六月二九日ころ、破産裁判所に対し、破産財団に属するものは金一〇万円のみであるとして抗告人の破産申立時の予納金残金一八万六八〇〇円を破産財団に組入を受けたうえ、以上のほか破産財団と認むべきものがないため破産法三五三条一項に基づき破産の廃止を申立て、破産裁判所は、同年九月七日、破産財団をもつて破産手続の費用を償うに足りないことを理由に本件破産を廃止するとの決定をしたことが認められる。

抗告人は、本件破産手続において、抗告人には破産法一五三条一項に定める破産管財人の請求に対する説明義務違反はなく、仮にあつたとしても債権者の厳しい取立を避けるためやむなく実家のある九州に転居したことによるもので、右義務違反は軽微であるから免責を許可するのが相当であると主張するもののようである。

しかし、前示認定の事実及び一件記録によれば、抗告人は、前示二店舗の営業停止をした各前日位まで、買掛債務が半年余累積していた取引先から材料の食品を信用取引で購入しながら、それ以前の同年四月一〇日付で右二店舗の什器備品を含む営業権を代金一五〇〇万円で他に売渡し右代金を受領するなど疑惑を招く行為をしていたのであるから、債権者の一部が、営業停止直後以上のことを知り、抗告人の責任を厳しく追及したことは容易に推認できるけれども、そのため抗告人において、破産管財人に対し、前示債権調査終了後もなお連絡することが不自由な状態が続いていたものとは認められないこと、抗告人の右二店舗の処分は、前示投資額やその時期からみて否認の対象になりうる可能性があり、また、抗告人が破産宣告前の裁判所の審尋に対し、上田某に金一〇六〇万円の貸付金のある旨を申述していたので、破産管財人は、本件破産の第一回債権者集会の期日(昭和五五年一一月二五日)において、以上の問題点の詳細は、抗告人との連絡が容易でなく事情聴取ができないため不明であり、今後抗告人に請求してその内容の説明を求め調査を続ける趣旨の報告をしていること、そして、前示債権調査終了後も、破産管財人から抗告人に対し前示問題点の内容の詳細な説明を求めたが、抗告人がその説明を怠つたまま推移したこと(破産裁判所が、債権調査終了後の昭和五六年八月二〇日、同年一〇月一五日の二回に亘り、抗告人の審尋期日を定め、抗告人を呼出しているが、第一回目はなんらの連絡なく不出頭、第二回目は病気を理由に不出頭。以上の職権に基づく手続は、抗告人が破産管財人に対する説明義務を怠つていたため、とられた措置と推認される。)、以上の経過のもとに、破産管財人が前示問題点を解明できないまま、本件破産が廃止されるに至つたものであることがうかがわれる。

以上の認定によれば、抗告人が破産法一五三条所定の破産管財人に対する説明義務に違反したことは明らかで、右違反の態様に照らし、同法三六九(ママ)条ノ九第五号により抗告人の本件免責の申立は不許可の決定をなすのが相当というべきであるから、抗告人のその余の主張を判断するまでもなく、本件抗告は理由がない。

(首藤武兵 野田殷稔 井筒宏成)

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